高校野球、夏の祭典
高校球児の夏の祭典、甲子園。
その日もそろそろ近づいてきている。
現在パ・リーグの本塁打王、日本ハムファイターズの「中田翔」。現在球界のエースとの呼び声も高い、楽天ゴールデンイーグルスの「田中将大」。日本球界NO.1の投手と呼ばれ、メジャーリーグのレンジャーズに移籍し活躍している「ダルビッシュ有」。彼らは皆この甲子園という舞台のスターだった選手たちである。
甲子園は全国のトップレベルの球児たちが集う高校野球界最高峰の舞台である。
そんな甲子園で今年はどんなドラマが起こるのか。また個々のスター選手にも注目が集まるが、その最高峰の舞台でトップにたつ高校もどこなのかは誰にも予想つかない。
その中でも参考になるのは今年行われた春のセンバツであろう。
優勝候補の筆頭として名前が挙げられるのが春のセンバツを怒涛の強さで制した埼玉県の「浦和学院」である。
浦和学院の強みは強力な打線。中でも「佐藤拓也選手(投・二塁・外野手)」は投手陣の一角であるが、チーム1の打者だと言えるだろう。春のセンバツでは打率、打点、本塁打のいずれの部門でもチームトップであった。
それに伴い固い守備も兼ね備えており、全国の頂点にもっとも近い高校なのではないだろうか。
しかし浦和学院の投手陣には、まだ絶対的エースがいない。そこが課題である。
この投手の部門で今年一際輝いている選手が、今高校野球界で最も旬と言っても過言ではない、神奈川県桐光学園のエース「松井裕樹選手(投手)」だ。
彼は最速147キロのストレートと、5種類の変化球を投げ分け三振の山をきづく。
彼の変化球は鋭くキレがあり、打者も簡単にはバットに当てることが出来ない。
野球は27個(1イニング3個×9イニング)のアウトをとるスポーツであるが、彼は昨年の夏の甲子園で22個もの三振を奪った。これは大会新記録である。しかも彼は当時まだ2年生である。今年最高学年となり、更に進化を増した彼が甲子園で暴れてくれるだろう。個人的には高校野球界最高の打線浦和学院VS松井裕樹選手の戦いが見てみたい。
また松井の陰に隠れてはいるがプロ野球界から注目を浴びているもう1人の投手が兵庫県報徳学園のエース「乾陽平選手(投手)」だ。
彼は関西の高校NO.1の投手とも言われ、東の松井、西の乾と呼ばれるほどの実力派投手である。
彼は最速146キロの手元で伸びるストレートと、落差の大きなカーブで三振の山をきづく。この東西両エースの投げ合いも見てみたい。
だが山口県民としては山口県勢の活躍が気になるところ。
現在山口県勢で注目度が最も高いチームは、春のセンバツに出場した「岩国商業」だろう。このセンバツでは「岩国商業」が、優勝候補であり関西の強豪「履正社」を倒し山口県民を熱狂させ、他県勢を驚かせたのである。
この岩国商業の強さの軸となったのが、エース高橋の存在である。清原、桑田のKKコンビを生んだPL学園や、怪物中田を生んだ大阪桐蔭などの集う群雄割拠の府大会を優勝した履正社を5安打完封に抑えるのはとても簡単なことではない。
彼の持ち味は抜群のコントロール。両サイドにうまく球を投げ分けることが出来、打ち頃の球を投げない。さらに彼の腕を思いっきり振る投球は、変化球と直球の見極めがしづらいのである。
課題は打線といったとこであろうか、高橋ほどの選手であれば全国でも十分通用するだろう。しかし、打線の援護がないと勝つことはできない。野球は9人で行うスポーツであり、1人の選手の力だけで勝ち上がることはできない。だからこそおもしろいのである。
今のところ山口県では岩国商の評価が高いが、実質夏の予選をこの目で見るまでは現在の実力などは語れず、有力校も分からないのが事実である。
山口県勢はどこが上がっても応援したいのだが、甲子園の舞台はそう甘くはない。上に挙げられたような強豪校が待ち受けているのだ。
しかしここに挙げられたチーム、選手が絶対の活躍を見せるわけではない。ましてや予選もこれからというとこで、甲子園の舞台に上がれるかも定かでは無いのだ。
そして、これまでの記事に書かれたことは夏の甲子園の楽しみ方の1つにすぎないのだ。
夏の甲子園には様々なドラマが描かれている。深く探っていけばものすごく感動を生むものであり、第3者から見ても涙が出るものだ。
その魅力というのも、この舞台に立つのに1番長い選手で3年間もの努力の結晶が詰まっている。この3年間夏の暑い日、冬の寒い日も彼らはこの舞台に立つため、そしてこの舞台で1つでも多く勝ち上がるために練習をしてきたのだ。
それは一般の人からは想像もつかないほどキツイ毎日であったはずだ。その中でも選ばれた者たちのみこの舞台に立つことが許され、その中たった1試合でドラマの終わりや続演が決まるのだ。
なぜ彼らはそんなキツイ日々を過ごしてまでこの「甲子園」という舞台を目指すのか、「甲子園」には球児のみに分かるそれほどの価値があるのである。
そんな舞台に立った球児達の気迫や緊張、底力、熱意といった様々な感情が目を持って見える。
そんな彼らのステージをテレビ越しで良い。
皆の目で見ていただきたい。
球児たちのアツい夏の祭典が、今幕を開けようとしている。


経済学部3年 上杉将司