【麝香】じゃこう

 

 ジャコウジカの下腹部にある鶏卵大の麝香腺を乾燥して得られる香料。紫褐色の粉末で芳香がきわめて強く、強心剤、気つけ薬など種々の薬料としても用いられる。四味臭(しみしゅう)。じゃ。紫麝。麝香のへそ。ざこう。

▼じゃこう‐あげは(ジャカウ‥)【麝香鳳蝶】 アゲハチョウ科の大形のチョウ。はねの開張約10センチメートル。雄は絹糸状の光沢のある黒色で、後翅の後ぶちに紅色紋があるが裏面ほど顕著でない。雌は灰褐色で、翅脈は黒く、後翅の紋は橙色。幼虫は阿菊虫(おきくむし)と呼ばれる。年に数回、または春秋の二回発生。雄の体から芳香を放つところからこの名がある。本州以南の平地に分布。やまじょろう。
▼じゃこう‐いぬ(ジャカウ‥)【麝香犬】 「じゃこうじか(麝香鹿)」の異名。
▼じゃこう‐うし(ジャカウ‥)【麝香牛】 ウシ科の哺乳類。牛より小形で肩高約1.2メートル、ヤギ、ヒツジ類に近い。特有の臭気を発する。体毛は暗褐色で長くたれる。角は外下方に曲がり、ついで上方に曲がる。北アメリカの北極地方に分布。麝香羊。
▼じゃこう‐えんどう(ジャカウヱンドウ)【麝香豌豆】 「スイートピー」の異名。
▼じゃこう‐じか(ジャカウ‥)【麝香鹿】 シカ科の哺乳類。肩高約50センチメートル。体形は普通のシカに似ているが雌雄とも角はない。雄の上あごの犬歯は口外にのびる。体毛は暗褐色で灰白毛がまじる。森林に単独か雌雄ですみ、木の芽・葉・こけなどを食べる。雄の下腹部にある嚢状の腺から麝香がとれる。ネパール地方から中国・朝鮮・シベリアまで分布。じゃこういぬ。じゃ。
▼じゃこう‐じゅう(ジャカウジウ)【麝香獣】 ジャコウジカ、ジャコウネコなど麝香を出す動物の総称。
▼じゃこう‐すり(ジャカウ‥)【麝香磨】 麝香を磨って粉末にするための茶碗に似た器。
▼じゃこう‐せん(ジャカウ‥)【麝香腺】 麝香嚢の中にあって麝香を分泌する腺。
▼じゃこう‐そう(ジャカウサウ)【麝香草】シソ科の多年草。北海道・本州・四国の山地の樹陰に生える。高さ60〜90センチメートル。全体に芳香がある。葉は対生し、短柄があり、葉身は長さ10〜20センチメートルの長楕円形、先はとがり基部は耳形で縁に粗い鋸歯がある。初秋、上部の葉腋に淡紅紫色か白色で長さ3〜4センチメートルの筒状唇形花を数個ずつつける。《季・秋》
▼じゃこう‐ちどり(ジャカウ‥)【麝香千鳥】 植物「みずちどり(水千鳥)」の異名。
▼じゃこう‐なでしこ(ジャカウ‥)【麝香撫子】 「カーネーション」の異名。
▼じゃこう‐ねこ(ジャカウ‥)【麝香猫】 ジャコウネコ科の哺乳類。体長約六〇センチメートル、ネコに似ているが頭が細長く吻(ふん)はとがる。体毛は灰褐色で黒斑があり、尾には暗色の輪状紋が並ぶ。東南アジアに分布。夜行性で、森林にすみ小動物や果実を食べる。肛門付近の腺から麝猫香という強い臭気のある黄色の液を出す。霊猫(れいびょう)。
▼じゃこう‐ねずみ(ジャカウ‥)【麝香鼠】 トガリネズミ科の哺乳類。体長約12センチメートル。外形はジネズミに似ているがはるかに大きく、吻(ふん)が長くとがる。体毛は灰褐色。人家付近にすみ、夜、昆虫や小動物を捕食。体側の腺から悪臭を放つのできらわれるが穀類にはほとんど害を与えない。東南アジアに広く分布し、日本では長崎・鹿児島・沖縄などにみられる。りゅうきゅうねずみ。
▼じゃこう‐のう(ジャカウナウ)【麝香嚢】 ジャコウジカの雄の包皮にある特殊の分泌腺。きんちゃく状の塊で、重さ20〜30グラム、内部に分泌液を貯える。繁殖期によく発達し、分泌液は雌を誘うのに役立つ。これを乾かして麝香を製する。しばしばジャコウネコの肛門付近にある会陰腺をもいうことがある。これからは麝猫香をとる。
▼じゃこう‐ひつじ(ジャカウ‥)【麝香羊】 「じゃこううし(麝香牛)」の別称。
▼じゃこう‐ぼね(ジャカウ‥)【麝香骨】 丁子(ちょうじ)、沈香(じんこう)などで煮て、芳香をこめた扇の骨などの称。
▼じゃこう‐みぞほおずき(ジャカウみぞほほづき)【麝香溝酸漿】 ゴマノハグサ科の多年草。アメリカ原産で、観賞用に栽培。全体に麝香に似た芳香がある。茎は地をはって長さ三〇〜四〇センチメートルぐらいになる。茎と葉には粘毛を密布。葉は短柄をもち対生し長卵形。5〜10月、上部の葉腋に先が五裂した筒状唇形花をまばらに開く。花は淡黄色で褐色の斑点があり、長さ一・五センチメートルぐらい。においほおずき。アメリカみぞほおずき。ミムラス。
▼じゃこう‐ゆ(ジャカウ‥)【麝香油】 麝香を入れた芳香油。
▼じゃこう‐れんりそう(ジャカウレンリサウ)【麝香連理草】 「スイートピー」の異名。
 
【国語大辞典】